2018年3月1日木曜日

右旋と左旋の受信の謎

大昔大学の講義で円偏波の右旋と左旋は
同一周波数でも別々に使えると放送系の講義で習った記憶はありますが、
なぜ別々に使えるのかは教えてもらった記憶がありません。
まあそんなものだと覚えただけのような気がします。

時は流れ、2018年12月から始まるBSの4K/8K放送では左旋も使うと聞いたとき、
右旋と左旋の受信分けってどうやってするのという疑問が。送信は分かるけど。
で、インターネット上で調べてみるものの参考になるような説明は見つかりません。
まあいいやと放っておいたのですが、
かなり時間が経ってからヒントらしきものを手に入れ、
自力で考えることで理解ができました。
せっかくなのでここで簡単に説明しておくことにします。

電波は進行方向と電界の向きで構成する面、
偏波面が大地と平行だと水平偏波、
垂直だと垂直偏波と呼ばれます。これらはアンテナの向きで決まります。
受信する際は偏波面とアンテナの向きを合わせる必要があります。
円偏波は偏波面を電波の周波数と同じ速度で回転させており、
すなわちアンテナをバトントワリングの要領で高速回転させることで
実現することができます。ただ周波数が高いと回転速度が早すぎて
物理的にはアンテナを回せないため電気的に回します。
すなわち、出力する信号を二等分し、一方はそのまま、他方は位相を90°遅らせ、
互いに垂直に配置した2つのアンテナでそれぞれを送信することで、
空間上偏波面が回転しているように見え、これが円偏波です。
2つのアンテナのどちらで、どちらの信号を送るかで
右回りか左回りかが決まり、これが右旋と左旋となります。

受信についても同様です。
互いに垂直に配置した2つのアンテナで受信した2つの信号のうち、
位相が90°進んでいる方を90°遅らせ、もう一方と足し合わせることで
信号強度を高めることができます。
円偏波の電波を1つのアンテナで受信すると
パワーが半分の信号が受け取れることになります。
この場合は右旋と左旋の区別はつきません。

それでは右旋と左旋はどう受信分けするのでしょうか?
先の直交した2つのアンテナで受信した2つの信号を
A*sin(wt)とA*sin(wt-90°)と表すとして、
適切な処理、すなわち前者を90°遅らせて加算すると
A*sin(wt-90°)+A*sin(wt-90°)=2*A*sin(wt-90°)
となります。しかし誤った処理、つまり後者を90°遅らせて加算すると
A*sin(wt)+A*sin(wt-180°)=A*sin(wt)-A*sin(wt)=0
と消えてしまいます。
ここでいう適切な処理は、
送られてきた右旋を右旋として受けることを意味し、
誤った処理は送られてきた右旋を左旋として受けることを意味します。
したがって、右旋と左旋が混じった電波から右旋、または左旋を
選択的に取り出すことができるということです。

ところで特定の周波数帯で一律に位相を90°遅らせるような位相シフタは
低周波だとOPアンプで構成できますが、
BS放送などの高周波では導波管を用いて偏波変換するようで、
前述のとおりに行われているわけではなさそうです。
あまり詳しく知らないんですけど、
BSのLNBメーカーのページを見るとセプタムがどうとかこうとか。

0 件のコメント:

コメントを投稿