推理小説などで電源を入れたままのヘアドライヤーを湯船につけて
感電させるような殺人事件を何作品も見たことがありますが、
今回の事故はほとんどそういう状況だったのかもしれません。
大変痛ましいことで、
第三種電気主任技術者の免状を持つ身としては改めてその意義を考えさせられます。
その管理下で死亡事故が起これば業務上過失致死に問われることになります。
さて、今回の事故をきっかけに
第三種電気主任技術者の試験勉強のときに、
法規で電気柵についての記述を読んだ記憶が蘇り、再度確認してみました。
当時の参考書を引っ張り出しましたが、パッと探せなかったので
電気設備に関する技術基準を定める省令を見ると、
(電気さくの施設の禁止) 第七十四条 電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、 その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。 ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入 又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、 感電又は火災のおそれがないように施設するときは、この限りでない。との記述が見つかりました。
また、電気設備の技術基準の解釈によると、
【電気さくの施設】(省令第67条、第74条) 第192条 電気さくは、次の各号に適合するものを除き施設しないこと。 一 田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入 又は家畜の脱出を防止するために施設するものであること。 二 電気さくを施設した場所には、人が見やすいように適当な間隔で危険である旨の表示をすること。 三 電気さくは、次のいずれかに適合する電気さく用電源装置から電気の供給を受けるものであること。 イ 電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置 ロ 感電により人に危険を及ぼすおそれのないように出力電流が制限される 電気さく用電源装置であって、次のいずれかから電気の供給を受けるもの (イ) 電気用品安全法の適用を受ける直流電源装置 (ロ) 蓄電池、太陽電池その他これらに類する直流の電源 四 電気さく用電源装置(直流電源装置を介して電気の供給を受けるものにあっては、 直流電源装置)が使用電圧30V以上の電源から電気の供給を受けるものである場合において、 人が容易に立ち入る場所に電気さくを施設するときは、 当該電気さくに電気を供給する電路には次に適合する漏電遮断器を施設すること。 イ 電流動作型のものであること。 ロ 定格感度電流が15mA以下、動作時間が0.1秒以下のものであること。 五 電気さくに電気を供給する電路には、容易に開閉できる箇所に専用の開閉器を施設すること。 六 電気さく用電源装置のうち、衝撃電流を繰り返して発生するものは、 その装置及びこれに接続する電路において発生する電波又は高周波電流が 無線設備の機能に継続的かつ重大な障害を与えるおそれがある場所には、施設しないこと。とのことです。
さらに一部改正され、
電気工事士法施行規則の一部を改正する省令(平成18年経済産業省令第11号) 電気工事士が行うことと定められている作業から、電気さくの電線を接続する作業、 電気さくを使用するための接地極を埋設する作業等を除外する。
電気設備の技術基準の解釈の一部改正 電気さくについては、これまで、人が容易に立ち入れない場所にのみ施設が認められていたが、漏電遮断器の施設を条件に、人が立ち入る場所への施設を認めることとする。 また、電線の強度、他の工作物との離隔距離等の規定を削除する。のようになっているようです。
なお、これらは必ずしも最新の情報ではない可能性があることを付け加えておきます。
これら省令から分かるのは、
供給電源が30V以上で、かつ人が容易に立ち入る場所に電気柵を設置する場合は、
適切な漏電遮断機と開閉器と危険表示の看板が必要ではあるが、
設置作業のかなりの部分を電気工事士でなくとも行えるということです。
Amazonでも適法と思われる電子柵の電源(電池式)が販売されてますが、
これを商用交流100Vに取り替えることは技術的に難しくなく、
安易な発想でやってしまう方は少なくないと思われます。
そしてそういう素人は省令の内容を知らない、あるいは理解できなかったりします。
今回の事故の報道の内容を信じれば、それは公知ではあっても周知ではなかった、
と言わざるを得ないように思えます。
それにしても、今回の事故によって電気柵のイメージが
頗る悪くなるのは避けられそうにありません。
今後は設置や管理の厳格化が問われそうです。
違法な使用は論外としても、適切な電気柵は有用なものなんでしょうがね。
さて、図らずも今週末は第二種電気工事士の技能試験です。私も受験します。
一通り候補問題を体験し、まあ普通にやれば合格できるでしょう。
心配なのは試験環境でしょうか。
いつも材料を床に目一杯広げながらやっているため、
狭いところでの作業はストレスとなりますし、
何より、いつも「このリングスリーブの刻印は'小'で…」とか、
「これは1.6mm径だから…」などと喋りながらやっているのを、
黙ってやらねばならないというのは意外と難題です。
とりあえず晴れて電気柵が設置できるようきっちり合格したいものです。
まあ設置する予定は今のところありませんが。
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