2011年2月15日火曜日

MeeGoの終焉

昨年12月に Qt Conference Tokyo というイベントがあり、
あまり気は進まなかったものの故あって参加しました。
正直大した内容ではなかったのですが、
そこで受けた私の印象はというと…以下当時私が書いた報告書をもとにしています。

全体的には以下のような流れに持って生きたいという思惑が透けて見えていました。

QtをGPL/LGPL化してインストールベースを増やす

有料アプリケーション開発者が増える

開発環境を無償で配る

無料アプリケーション開発者も増える

アプリケーションが増える

oviアプリケーションストアに登録するアプリケーションが増える

ユーザが増える

Nokiaが儲かる


Nokiaの中のQt担当者は壮大な野望を抱いているようですが、
Noika全体としてはのQtに関して将来の利益のための投資と、
MicrosoftやAppleやAndroidの携帯電話への侵食を
押さえ込むための道具としか考えていないようでした。
残念ながら市場はSynbianやMeeGoを求めているようには見えないので、
今の混沌とした情勢がAndroid支持で決すればNokiaは
Samsungに携帯電話の盟主を譲ることを覚悟の上で
Qtを捨ててAndroidに乗り換えるのではないでしょうか。

Qt自身はポータビリティのあるプラットフォームとして確実に生き残るでしょう。
実際私も Visual Studio でWindows用のアプリケーションを作るより、
Qt上に作った方がいいなと前から思っております。
開発環境も無料ですし。
まあ最近Windows用のGUIアプリケーションを作っていない私が言っても
説得力はないのですが。
おそらくQt/Embedded自身は3年後にはマイノリティになっているでしょう。
今回の会議の中でAndroid上でQtを動かす非公式なプロジェクトも存在しているものの
実用の域ではないしサポート等もやるつもりはないとの発言があり、
うがった見方をすればこれはNokiaが保険を掛けているとも取れました。

Qt自身はプラットフォームとして悪くないので
単機能の組み込み機器向けに使っていく分にはいい選択肢だとは思いますが、
それ以上の期待を抱くのは危険でしょう。

以上が昨年末時点の私の考えだったわけですが、
先週この一部が異なる形で現実になることがわかりました。
NokiaのWindows Phoneへの移行です。

これは事実上のMeeGo、そしてSymbianの放棄を意味します。
こうなればこの2つのプラットフォーム向けに
アプリケーションを書く人は皆無となり、
アプリケーションストアも成立せず、
エコシステムは完全に断ち切れることになります。
どうしてもAndroidは避けたいNokiaと
なかなか立ち上がらないWindows Phoneを何とかしたいMicrosoftとの
妥協の産物と思われます。

ですが、これによってこのあと何が起きるのか考えてみると…

まずはしごをはずされた形のIntelの出方です。
Intel自身が開発に関与しているプラットフォームは
今やLinuxベースのMeeGoだけのはずで、
パートナーとなるメジャー端末メーカのNokiaが見放せば、
もはや採用される可能性が低いソフトウェアを
自分たちだけで発展させていく必要にせまられます。
ではMeeGoを放棄できるかといえばそれも難しそうです。
というのも、事実上Intel CPUの専売特許であったWindowsが
2,3年以内にARMに対応するとみられるということがあるからです。
そうなるとタブレットやネットブック以下の領域に
Intelが食い込む余地はほぼなくなります。
AMDの場合はターゲットがもう少し上になるので、
今後はWindowsのためにAPUの性能を上げる方向に進化すればいいのですが、
IntelのAtomは戦えなくなります。
ここに残るためにIntelはMeeGoを担がざるをえません。

そしてNokiaはというとMeeGo部門とQt部門の売却です。
が、MeeGoは売り先がIntel以外に思いつきません。
ARM系のSoCメーカーであるTIやFreescaleなども候補には挙げられますが、
プラットフォームに関しては全方位外交しているところが多いので、
わざわざMeeGoを抱え込むとは思えません。
もっと小さなところが買収したり、
スピンアウトも選択肢としてはあるでしょうが、
そうなればもはや誰も採用しません。

MeeGoに不可欠なQtもIntelが買収しないなら
Trolltech時代に逆戻りし細々やっていくことになるでしょう。
ただし、特に組み込み関係だと今は選択肢が他にもあり、
わざわざQtを選択する意義はあまりありません。

もうひとつありえるのはGoogleが買収して
x64+Linux+Qtを本格的にWindowsにぶつけることで、
これについてはIntelは歓迎すると思われますが、
Microsoftと組むNokiaは売りづらいことこの上ありません。
ただし、GoogleがChome OSを放棄して
ARM+Linux+Qtをネットブックに同時展開ということになれば
Intelにとっても面白くありません。

いろいろ推論をめぐらせましたが私の予想では、
QtはGoogleに売却されて、IntelはMeeGoはあきらめるということになります。
したがって将来的には、
PCはIntel(AMD) CPUでWindows、MAC OS X、GoogleのLinux+Qtの、
タブレットとネットブックはARMでWindows、iOS、Androidの、
スマートフォンはARMでWindows Phone、iOS、Androidの三つ巴の争い、
という方向に収束するのではないでしょうか。
ただし、Windows Phone は長期的には消え、
NokiaはAndroidへ行くような気もします。

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